えぼぐの神様N

えぼぐの神様N

元新聞記者がサブカルライフを送りながらオカルトを掘り下げるブログ

隣人三本勝負~お前はいったい誰なんだ!…誰なんだ?2本目 VS 謎の女 ~

一本目→

 

ムハマドと出会って二年が経過した、大学三年生の秋。

 

不在にしていた三階の二人、

部屋から出てくるところを一度しか見たことがない大学生(くらいの年齢)の男性と

ペット禁止のアパートでどう見ても犬の多頭飼いをしている中国人の女性

それにムハマドを加えた4人での暮らしにも慣れてきた頃。

 

 

夏休みの帰省から戻ってきた私を待っていたのは、

相変わらずの安いアパートと

 

空になった隣の部屋だった。

 

ムハマドは引っ越した、何の知らせも、そんな素振りさえもなく

彼とはそんなに仲が良かったわけではない、

結局二人でご飯を食べたのも二、三度程度だったように思う。

 

それなのに、主をなくした隣の部屋を見た私は

胸がちりちりと痛んでいた。正直な話ショックだった。

 

彼は無事、医学を学べたのだろうか。

故郷の村に帰って今頃は先生、なんて呼ばれているのだろうか。

 

結局あのドロドロに溶けたチョコレートは何だったのか

たまに来る外国人友達(?)と部屋で合唱していたのは何の儀式だったのか。

 

※調べた所、イスラム教には音楽を人の理性を狂わせるとして否定する派閥と

これを容認する派閥の対立構造が存在する。ムハマドは容認派だったのだろう。

 

結局7年経った今も彼がどうしてこんな半端な時期に、

いなくなったのかはわからないままである。

 

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それから二週間後だった。

 

ムハマドの部屋に荷物が運び込まれているのを見かけた。

 

一瞬ムハマドが帰ってきたのかと思い、部屋を覗くと

引っ越し業者の人をぼうっと眺める女の人と目が合った。

 

ぼさぼさの長い黒髪、落ち窪んだ眼窩。

年齢は40歳くらいだろうか、化粧っ気のない目元の皺は

彼女のこれまで味わってきた苦労を体現しているようだ。

 

この部屋の新しい主である女性は、失礼だが

一切生気を感じない、死人のような女性だった。

 

えぼ「隣に越してきた方ですか?お隣のえぼです、よろしく。」

 

女性「……。」

 

無視である。

大人でもするんだね、無視って。

大人の無視って子供の頃の2倍くらいつらいね。(当社比)

 

ただ、この人は私から消して目を離さなかった。

滔々と、私を見つめていた。

 

無機質な視線にどことなく怖くなった私は、じゃあ、これで

と適当な捨て台詞を残して家へと帰った。

 

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それから彼女と会ったのは、一度だけである。

 

それから一月ほど経った晩だった。

肌寒さからか深夜の2時ごろに起きた私は外に煙草を吸いに出た。

 

 

当時の私は秋晴れの夜に月を見るのが好きだった、

夏ほど押しつけがましい暑さもなく

冬ほど居辛い寒さもなく

春ほど花粉もない。

 

しかし、ドアから出た私が真っ先に見たのは

一月振りに見る、死人のような顔だった。

 

夜の二時、隣人の彼女は自らの部屋の扉の前でぼうっとしていた。

腕をだらんと下げ、ただ真っすぐに宙を見て、口を開けて

 

月を見ていたわけではない、だって月は彼女の視線の反対にあるのだから。

 

正直訳が分からなかった、怖かった。

でもここで逃げたらなんか負けた気がするし、

正体不明を正体不明のままにしておくのはもっと怖かった。

 

私は勇んで女性の隣に行き、しばらく煙草をふかした。

女性と同じ何もない空間を見ていたのだが、

ふと振り返って見上げた月がきれいだったため、思わず彼女に話しかけることにした。

 

えぼ「月が綺麗です…よ。」

 

危うく告白するところだった。

 

危ない危ない、語尾を変えれば只の状況説明である。

 

しかし、彼女から言葉は返ってこなかった。

 

女性「……。」

 

しばらくの後こちらを振り向き、そのまま家へと帰っていった。

 

煙草を吸い終わった僕は、多少のスベった感と達成感を得つつ家に帰った。

(帰り際カーテンが閉まるようなシャー!という音が聞こえたが多分気のせいである)

 

二本目、勝利

 

追記①

 

それから二週間くらい後、彼女の部屋から

家具が運び出されているのを見つけた。

 

えぼ「あれ、隣の部屋の人越したんですか?」

 

宅配さん「ええ、ですね。今引っ越し作業中です」

 

合わなかったのだろうか、

確かに家賃がいくら安い(29,800円)とはいえ

女性が一人で住むような環境ではないのかもしれない。

ユニットバスだし、風呂の電気つかねえし。

 

追記②

 

彼女がこのアパートからいなくなって数週間後、

アパートの階段の目立つところに殴り書きの張り紙を見つけた。

 

曰く

 

ここに住んでいる〇〇〇〇を探しています。

30代後半の女性です、痩せています。

見つけたら000-0000-0000まで

すぐにご連絡をください!(大体原文ママ

 

人が人を探すときに「見つけたら」なんて言い方をするだろうか。

僕は見ない振りをして急いで家に帰った、翌日張り紙は消えていた。

 

彼女は「見つけられてしまった」のだろうか、

記憶に焼き付く乱暴な文面と嫌でも想像してしまう事情に寒気が止まらなかった。

 

二本目、勝利 恐怖により逆転敗北